IR Chrome VS Aerochrome Filter
IR Chromeの類似品を試してみた

IR Chrome + Aerochrome Filter 写真・文=澤村 徹


昨今、デジタル赤外線写真界隈ではIR Chromeが人気だ。Kolari Visionが開発した赤外線フィルターで、フルスペクトラム機と組み合わせると往年のカラー赤外フィルム、Kodak AeroChromeみたいに赤や紫の葉が撮れる。しかもカラースワップ不要というのだからたまらない。拙書「デジタル赤外線写真マスターブック」や個展「視覚の陰謀論」でも、IR Chromeで撮った赤い葉の写真は好評だった。

そんな折り、赤外仲間からIR Chromeの類似品があると教えてもらった。Vision Architect OpticsのAerochrome Filterという製品だ。Vision Architect Opticsはアメリカのシカゴにある光学系OEMブランドらしい。ウェブサイトはいかにも法人向けといった雰囲気だが、一応、ebayで同社の製品が購入できる。今回入手したのは67mm径のAerochrome Filterで、89.99ドルだった。ちなみに、同サイズのIR Chromeは139.99ドルだ。

右がKolari VisionのIR Chrome。左がVision Architect OpticsのAerochrome Filterだ。Aerochrome Filterのパッケージには「Chlochrome Red Revision 1.0」と書かれていた。Aerochrome Filterという名前は販売向けの通称かもしれない。

外観から見ていこう。IR ChromeとAerochrome Filter、ともに青いフィルターだ。しかし、よく見ると、Aerochrome Filterの方が若干地味な青のように思える。光を当ててみると、IR Chromeは青とマゼンタが重なったような色合いだが、Aerochrome Filterは白っぽい反射だった。とりあえず、両者はまったくの別物という判断で問題ないだろう。

IR Chromeに光を当てたところ。青とマゼンタが重なったような色合いだ。
Aerochrome Filterに光を当てたところ。かすかに青みを感じるが、ほぼ白っぽい反射だ。ガラス面をレンズクリーナーでメンテした際、クリーナー液を弾かない点が気になった。

肝心の描写だが、結論からいうと、Aerochrome Filterでもちゃんと赤い葉が撮れた。ただし、IR Chrome同等かというと、そこは微妙なニュアンスになる。使用機材はフルスペクトラム改造したα7 III、レンズはVario-Tessar FE 4/24-70 ZA OSSだ。ホワイトバランスはオートで撮っている。α7系のボディだと、撮って出しは葉がオレンジ色になる。この点はどちらのフィルターも同じ結果だ。ただし、Aerochrome Filterの方がややマゼンタかぶりが強い。IR Chromeの派生品でIR Chrome Liteというフィルターがあるのだが、マゼンタのかぶり具合はIR Chrome Liteっぽいなと感じた。

【IR Chrome】α7系でIR Chromeを使うと、撮って出しは葉がオレンジになる。
【Aerochrome Filter】撮って出しはIR Chromeより多少マゼンタが強い印象だ。

ホワイトバランスを整え、暖色の色相を調整すると、赤い葉と青い空が現れる。IR Chromeでおなじみのこの絵作りが、Aerochrome Filterでも可能だった。この点、よく似せてきている。赤い葉を撮ることが目的なら、正直なところどちらを使っても支障ないだろう。ただし、色を作り込む段になると、Aerochrome Filterはハンドリングの難しさを感じた。青が暗めで、その他の色も色情報がリッチとは言い難い。気持ちのいい色を作るのに少々苦労する場面が多かった。

【IR Chrome】色相を調節して葉を赤くした状態。IR Chromeの十八番ともいえる写りだ。
【Aerochrome Filter】IR Chromeに似せて赤い葉を仕上げてみた。青はやや暗く写る傾向がある。

ミスト系のフィルターの例を持ち出すまでもなく、人気のフィルターは類似品がいろいろなメーカーから登場する。IR Chromeというニッチなフィルターがその対象になっていることに驚くとともに、デジタル赤外線写真の裾野が着実に広がっているのだなと実感した。ちなみに、IR ChromeとAerochrome Filter、どちらを使うかと問われたら、IR Chromeだ。同様にIR ChromeとIR Chrome Liteの場合もIR Chromeだ。理由はシンプルで、色作りしやすいから。葉を赤くすることが目的ではなく、赤い葉で何を表現するかが大切なので、柔軟に色を作り込める画像がほしい。試写した印象だと、自分の制作スタイルではIR Chromeがもっとも適していると感じた。

【Aerochrome Filter】α7 III(Full Spectrum)+ Vario-Tessar FE 4/24-70 ZA OSS F5.6 1/400秒 ISO100 このくらい高彩度な赤に簡単に持っていける。青は地味めなので、もっとビビッドに調整してもよかった。
【Aerochrome Filter】α7 III(Full Spectrum)+ Vario-Tessar FE 4/24-70 ZA OSS F5.6 1/320秒 ISO100 逆光ではフレア・ゴーストが出やすい。特にフレアは多めの印象だ。逆光条件でも赤い葉に仕上げることは可能。

Kolari Vision IR Chrome
Vision Architect Optics Aerochrome Filter