Leica M8 with IR Chrome
IR ChromeはLeica M8で使えるのか?

Leica M8 + IR Chrome 写真・文=澤村 徹

Kolari VisionのIR Chromeはフルスペクトラム機専用のフィルターだ。フルスペクトラム機以外では赤(およびオレンジ)の葉は撮れない。赤外線と一部の可視光線を取り込むことで、あの特徴的な赤い葉が撮れるのだ。

では、ライカM8はどうだろう。赤外線カットフィルターが極端に薄く、無改造で赤外線撮影できる稀有なデジタルカメラだ。フルスペクトラム機ほどではないが、一応、赤外線感度がある。案外IR Chromeが使えたりしないだろうか。

ライカM8にG Biogon T* 28mmF2.8を装着し、レンズ先端にIR Chromeを取りつける。ライカM8はライブビューがなく、赤外線撮影ではファインダーでピント合わせしてから手動でピントシフトが必要だ。ただし、IR Chromeはピントシフト不要。ファインダー上のピント合わせだけでよい。IR Chromeはそれなりに可視光線を取り込んでいることがわかる。

【Leica M8 + IR Chrome】撮って出しの状態。かなり青みの強い写りだ。
【Leica M8 + IR Chrome】ホワイトバランスを調整。画像内の白っぽい部分をスポイトツールでクリック。葉がくすんだ緑になっている。
【Leica M8 + IR Chrome】Lightroomで色調を編集し、葉を赤くしてみた。HSLで色相と彩度を調整し、それでも赤くならないのでキャリブレーションで強引に赤くしてみた。

撮って出しは青みの強い画像だ。ホワイトバランスを整えると、緑の葉はくすんだ色になっていた。UV/IRフィルターを付けずにライカM8で撮った画像に似ている。赤外線が葉の緑に影響しているのだろう。くすんだ緑を色情報的に解釈すると、暖色寄りの緑といえる。この状態なら、赤い葉にレタッチすることが可能だ。とはいえ、相当ハードなレタッチになる。Lightroomを例にとると、HSLの色相と彩度だけでは赤にならないため、キャリブレーションで強引に赤領域にもっていった。IR Chromeで赤い葉が撮れたというよりも、レタッチで葉を赤く染めた印象だ。

【Leica M8 + IR Chrome】撮って出しの画像。やはり青みが強い。
【Leica M8 + IR Chrome】ホワイトバランスを調整。くすんだ葉が現れる。ライカM8をUV/IRフィルターなしで使うと、こんな葉が撮れる。
【Leica M8 + IR Chrome】レタッチで葉を赤く編集。強引な画像編集をしているが、同じことをIR580の画像でやってもここまで赤くならない。

ライカM8でIR Chromeは使えるか、と問われたら、「使えなくもない」と歯切れのわるい答えを返すことになる。やはりIR Chromeはフルスペクトラム機で使ってナンボのフィルターだ。ただし、IR580フィルターで真っ赤な葉が撮れるかというと、それも難しい。可視光線を多めに取り込むIR580は、たしかに葉が色濃く仕上がる。でも、真っ赤な葉に仕上げるのは困難だ。こうした状況を踏まえると、ライカM8とIR Chromeの組み合わせは(たとえ過度にレタッチするにせよ)一応赤い葉に仕上がる。IR Chromeの効果がないわけではない。まったく歯切れのわるい返答だが。

Kolari Vision IR Chrome