Leica M10 Infrared Photography
ライカM10で赤外は撮れるのか?

Leica M10 + G Biogon T* 28mmF2.8 + HOYA R72 Filter 写真・文=澤村 徹

 

ライカ仲間からライカM10で赤外が撮れると聞き、早速試してみた。周知の通り、ライカM8はIRフィルターを付けるだけで赤外線写真が撮れる。これはイメージセンサー前に貼り付けてある赤外線カットフィルターの効きがきわめて弱いからだ。このせいでライカM8は常にUV/IRフィルターを付けないと色再現性がひどく、これは大きな問題になった。翻ってライカM10はイメージセンサー前のカバーガラスこそ極薄だが、赤外線カットフィルターはちゃんと効く。ライカM8以降、デジタルM型ライカの赤外線カットフィルターはしっかり仕事をしている。そう、IRフィルターを付けたところで赤外線写真は撮れないはずだ。

ところが、先のライカ仲間しかり、ライカM10やライカMモノクロームで赤外線写真が撮れるという話を耳にする機会が増えた。実際のところ、どうなのだろう。赤外というよりは、ディープレッドフィルターで撮った程度ではないのか。もしくはすごく長秒になるとか。そんなわけで、手持ちのライカM10で赤外線撮影を試してみた。

ライカM10にG Biogon T* 28mmF2.8を付け、HOYA R72フィルターを装着。普段、ライカM8で使っているセットをそのままM10に装着してみた。結論からお伝えしよう。ライカM10は赤外感度がある。ただし、それはごく微細で、長秒撮影もしくは高感度撮影が条件だ。今回ISOオートで撮影したところ、開放F2.8で1/15秒、ISO6400というセッティングだった。ライカM10は高感度でもそこそこ画質がいいので、これくらいなら許容範囲だろう。

 

Leica M10 + G Biogon T* 28mmF2.8 + HOYA R72 Filter 絞り優先AE F2.8 1/15秒 ISO6400 AWB RAW ライカM10にR72フィルターを付けた撮って出しの画像だ。ライカM8だとマゼンタの画像になるが、ライカM10ではオレンジ寄りの赤になった。

 

撮って出し画像にホワイトバランス調整を施した状態。赤みがだいぶ収まったが、色の分離はいまひとつだ。空がアンバー、葉が淡い青になるのが理想。

 

Photoshopでカラースワップ処理を行った状態。葉は白く、空が青になり、デジタル赤外線写真らしくなった。ただし、全体に青かぶりしている。

 

ホワイトバランスを整えて青かぶりを解消した。緑の葉が白く抜け、ウッド効果が一目瞭然だ。ISO6400だがノイジーという印象は薄い。

 

ライカM10だとライブビューで撮れるので、赤外線撮影にともなうピントシフトは不要だ。ライブビューでそのままピントを合わせれば、ちゃんと合焦する。M8のように手動でピントシフトしなくてもいい。いいこと尽くめのM10赤外だが、ひとつだけ厄介なことがある。それは色かぶりだ。今回IR72フィルターで撮影したのだが、撮って出しでかなり赤が強い。カラースワップ後は青かぶりが顕著で、そのままだと絵作りが難しい。カラースワップ後にホワイトバランス調整(明るい葉の部分をスポイトツールでクリック)すると、色かぶりが軽減していわゆるデジタル赤外線写真っぽい仕上がりに近づく。このあたりの絵作り、色作りでちょっと手間がかかった。

ライカM8のように楽々赤外が撮れるわけではないが、ライカM10でウッド効果(葉が白く写る現象)を確認できた。高感度撮影になってしまうが、無改造で赤外線写真が撮れるボディとしてライカM10は貴重な選択肢だ。