Tetsu Sawamura New Book
オールドレンズはバベルの塔

ホビージャパン「オールドレンズはバベルの塔」 写真・文=澤村 徹

 

metalmickey’s cameraはカメラアクセサリーを紹介するサイトだが、今回は例外的に書籍を一冊取り上げてもいいだろうか。筆者の本業はライターで、ここ10年ほど、年1~2冊のペースでオールドレンズ本を書いてきた。これらの本はすべて解説書。当たり前だけど、オールドレンズのことをていねいに解説した本だ。しかし、今回の新刊はちがう。エッセイ集だ。

 

オールドレンズはバベルの塔[ホビージャパン][Amazon
発売:2021年1月29日
版元:ホビージャパン
判型:A5判
※AmazonのリンクはAmazonアソシエイトリンクを使用しています。

 

エッセイ集は芸能人や著名なアーティストが出すもので、自分とは無関係とタカをくくっていた。が、ついうっかり企画が通ってしまい、昨年の夏をつぶして書いたのがこの本、オールドレンズ・フォトエッセイ集「オールドレンズはバベルの塔」だ。四半世紀ほどライターをやってきたけど、エッセイ集なんてはじめてだ。

 

エッセイはブツカットからスタート。軽くドレスアップした姿を撮影した。キャプションはオールドレンズの概要に加え、筆者が当時購入した価格を記してある。みんなホロゴン好きだよね、筆者も大好きだ。

 

エッセイとはいえ、あえて小説風の文体を選んだ。「おいおい澤村、小説なんて大風呂敷広げて大丈夫かよ」と訝しがる人もいると思うが、実は若い頃、第1回新潮エンターテイメント大賞で最終候補に残ったことがある。小説っぽい文章はむしろ得意(笑)。

 

エッセイの後は写真が5枚つづく。普段のオールドレンズ本で載せているキメッキメの作例ではなくて、プライベート感というか、ほどよく脱力した写真を多めに掲載した。オールドレンズで撮った素の感じが伝わるといいのだけど。

 

バベルの塔は、実現不可能なことを目指す不毛感の象徴としてよく用いられる。そこにオールドレンズの終わりのない不毛感を重ね合わせ、タイトルにした。筆者がオールドレンズと出会い、オールドレンズ本を書くに至る時間軸にそって、20本のオールドレンズを取り上げている。オールドレンズに身も心も貯金も捧げた男の悲喜こもごもが書かれているといえば、それとなく内容がイメージしてもらえるだろうか。オールドレンズファンなら涙なくして読めない感動巨編、というのは冗談で、2~3時間でサクッと読めるカジュアルなエッセイ集だ。ぜひご一読を!

 

左のカメラはG Biogon T* 28mmF2.8をつけたライカM8。本書の中でとても重要な意味をもつカメラとオールドレンズだ。

 

ホビージャパン「オールドレンズはバベルの塔」