EOS R with OLD LENS
それでもEOS Rでオールドレンズを使いますか?

EOS R + GR Lens 21mmF3.5 写真・テキスト=澤村 徹

 

キヤノンのフルサイズミラーレスEOS Rは、オールドレンズのベースボディとしてどの程度のポテンシャルを秘めているのだろうか。ほぼ同時期に登場したNikon Z 6は、レンジファインダー機用広角オールドレンズがそれなりに使うことができ、なかなかどうしてオールドレンズ向きのボディだった。それに対し、EOS Rはどうなのか。まず、広角オールドレンズ耐性から見ていこう。

 

EOS R + GR Lens 21mmF3.5 絞り優先AE F8 1/400秒 ISO100 AWB RAW マゼンタかぶりと周辺光量落ちが激しい。ショートフランジの広角オールドレンズは難しそうだ。

 

上画像の中心部をクロップしたもの。中心部は実にシャープだ。

 

左下隅をクロップしたもの。結像が甘い上に、センサーの升目だろうか、細かい格子状のものが見える。画質的にかなり厳しい状態だ。

 

上の写真はEOS RにGR Lens 21mmF3.5を付けて撮影したものだ。周辺部にマゼンタかぶりが発生し、周辺光量落ちも顕著だ。周辺像は流れるほどではないものの、結像しているとは言い難い。ソニーユーザーならば、初代α7の画質を思い出したにちがいない。レンジファインダー用の広角オールドレンズを積極的に使いたいなら、α7IIIかNikon Z 6を選択した方がいいだろう。無論、レンジファインダー用広角オールドレンズ以外であれば、特に問題なく使用できる。

EOS Rとオールドレンズの組み合わせで使っていて、奇妙な現象に出くわした。画像の下半分が暗くなるのだ。横位置の場合は画像の下側が、縦位置の場合は右側が暗くなる。周辺光量落ちではなく、画像の片側だけがケラレるように暗い。Lightroomの段階フィルターで一辺を暗くしたような感じだ。

実のところ、この現象は心当たりがある。発売当初のソニーNEX-7を使った時、同様の現象に出くわしてずいぶんと慌てたものだ。当時は情報がほとんどなかったのだが、レンズ情報をボディに伝達できない状態(マウントアダプター経由でのオールドレンズ装着など)で電子先幕シャッターが有効になっていると、画像の片側が暗くなる。これはソニーの最新機でも同様なので、α7IIIでオールドレンズを使っているなら電子先幕シャッターはオフにしておいた方が賢明だ。

さて、EOS Rも同様だろうと電子先幕シャッターに関するメニューを探したのだが、これが見当たらない。どうやら「LVソフト撮影」なる機能が怪しそうだ。この機能はありていにいうと静音シャッターだ。サイレントシャッターのような電子シャッターではなく、あくまでも機械式シャッターを静音動作させるらしい。これが有効になっていると、高速シャッター時に画像の下半分が暗くなる。オールドレンズを使う際、「LVソフト撮影」はオフがお薦めだ。

 

【LVソフト撮影:モード1】EOS R + MC Zenitar-M2s 50mmF2 絞り優先AE F2 1/5000秒 ISO100 AWB RAW 画像の下半分が暗く影になっている。周辺光量落ちと異なり、画像の一端から暗くなっているのが特徴だ。

 

【LVソフト撮影:しない】EOS R + MC Zenitar-M2s 50mmF2 絞り優先AE F2 1/5000秒 ISO100 AWB RAW LVソフト撮影をオフにすると、画像のケラレは解消する。

 

EOS Rはオールドレンズに対して優遇措置がない。拡大表示の操作は煩雑、ボディ内手ブレ補正は未搭載、ショートフランジの広角オールドレンズは周辺画質が厳しい。オーソドックスなオールドレンズ撮影なら何ら問題ないのだが、オールドレンズのベースボディとして積極的にEOS Rを選ぶ理由は乏しいだろう。ただ、α7IIIやNikon Z 6と同価格帯でありながら、解像度は頭ひとつ抜きん出ている。「いつもは純正レンズ、時々オールドレンズ」という人ならかなり魅力的か。悩ましいモデルである。締めはM42マウントの異端児、凹みウルトロンの写真をどうぞ。

 

EOS R + Ultron 50mmF2 絞り優先AE F2.8 1/1600秒 ISO100 AWB RAW M42マウントの凹みウルトロンで撮影した。色調が過度にならないので、オールドレンズの風合いをストレートに実感できる。