Nocto Argus C3 Mount Adapter
アーガスの銘玉をライカで堪能
アーガスC3というカメラをご存知だろうか。海外ではレンガ(Brick)、日本では弁当箱の愛称で親しまれたレンジファインダー機だ。ハリーポッターをはじめ、様々な映画で小物として登場し、カメラに興味のない人でも、その外観に既視感があるかもしれない。1930年代から1960年代まで続いたロングセラーモデルである。
そんなポピュラーなカメラでありながら、アーガスC3はレンズ一体型カメラと誤解されることが多い。なにしろこのカメラ、距離計連動のダイヤル機構をボディの外側に露出させ、これでもかと尖ったデザインなのだ。普通の人でれば、レンズを交換しようなどと思いも寄らない。しかも、レンズ交換の手順がやたら煩雑で、初見でレンズ交換できる人はほぼ皆無だろう。かわいいルックスのわりにけっこうえげつないカメラだ。
前置きが長くなったが、ブリコラージュ工房ノクトからアーガスC3用のマウントアダプターが登場した。しかもボディ側はライカLマウントだ。距離計連動こそしないが、LMリング経由でデジタルM型ライカに装着できる。アーガスのレンズは小振りなので、ライカと相性が良い。もちろん、別途ライカLマウントアダプターを追加すれば、各社ミラーレス機にも装着可能だ。
ノクトのアーガスC3マウントアダプターは、無限遠調整に対応している。これが本製品のアドバンテージだ。実のところ、市場にあるアーガスのレンズは、けっこう無限遠にバラツキがある。なにしろ1930年代から続くシリーズなので、個体差はやむなしといったところか。
ちなみに、この無限遠調整はちょっとしたコツがいる。マウントアダプター上部の薄いリングがロックリング、内側にあるのがインナーリングで、この両者を操作して調整する。以下、リングの役割と作業手順を列挙しておこう。
●リングの役割
ロックリング
このリングを緩めると、インナーリングが回るようになる。インナーリングを調整した後、ロックリングを締め付けてインナーリングを固定する。
インナーリング
内側のリングを回すと、上下に可動する。これによって無限遠調整が可能だ。調整後はロックリングを締めて固定しよう。
●無限遠調整の方法
1.ロックリングを緩める
ロックリングを反時計回りに回す。これでインナーリングが回るようになる。
2.インナーリングで調整
ロックリングが動かないように指で押えた状態で、インナーリングを回して無限遠調整を行う。
3.ロックリングを締める
インナーリングを調整したら、ロックリングを時計回りに回して締める。これでインナーリングが固定され、無限遠位置が決まる。
さて、レンズの描写はどうだろう。Coated Cintar 50mmF3.5はアーガスC3の標準レンズだ。沈胴エルマーと同様、ちょっと暗めの50ミリである。スペックだけ見ると、開放からそつなく写るタイプを想像しがちだが、実写結果は予測の斜め上を行くおもしろい描写だ。開放でぐるぐるボケや周辺光量落ちが発生しやすく、フレアやゴーストもお手のもの。なかなかどうして収差そろい踏みのクセ玉だ。アーガスのレンズは一部のレア玉を除けば安価に買えるもの多く、オールドレンズ的に未開の地アーガスは耕し甲斐がありそうだ。