7artisans 50mm F1.1は距離計連動可能なライカMマウントレンズだ。ただ、この距離計連動というのがクセモノであることは、ライカユーザーならよくご存知だろう。オールドライカレンズを買ったら、距離計連動が微妙に合わない。これはありがちな話だ。レンズのせいか、ボディのせいか。はたまた自分の視力がわるいのか。距離計連動はとかく難しい。
そこで7artisans 50mm F1.1は、距離計連動アジャスト機能というアプローチを採用した。開放F1.1の距離計連動に求められる精度は相当なものだ。正直なところ、ボディのコンディションやユーザーの視力によりけりだろう。こうしたことを考慮し、本レンズは距離計連動のセルフアジャストに対応している。特定のボディ、特定の撮影者に限定して距離計連動をセッティングすれば、開放F1.1という極浅の被写界深度でも、ジャストでピント合わせできる。調整という手間はかかるものの、ある意味において最強の距離計連動機構だ。ただし、多くのライカユーザーにとって、レンズの距離計連動調整ははじめての経験だろう。ここでは初心者でもわかりやすいく、7artisans 50mm F1.1の距離計連動アジャスト機能を解説する。
はじめに調整の具体的な流れを見ていこう。このレンズには距離計連動調整用のチャートが付属している。このチャートをテーブルや台の上に貼り、2メートル離れたところから斜俯瞰でピントを合わせる。もちろん、カメラを三脚に固定して作業しよう。光学ファインダーを覗き、ていねいにピントを合わせて撮影する。ライブビューではなく、必ず光学ファインダーでピント合わせしよう。このとき絞りは開放にしておく。撮影画像を確認し、チャート中心の+マークにピントが合っていれば距離計連動の調整は必要ない。もし、+マークより前にピントが合っていれば前ピン、後ろにピントが合っていれば後ピンだ。前ピンおよび後ピンの場合は、距離計連動の調整が必要だ。
レンズの後端を見ると、後玉の外周に真鍮色のリングがある。このリングで距離計連動の微調整が可能だ。リング上にネジが2カ所あるので、これを付属の精密ドライバーで緩める。ネジを完全に取り除く必要はない。数度回転させ、緩めるだけでよい。
このあと真鍮色のリングを回転させ、距離計連動を微調整する。前ピンなら時計回り、後ピンなら反時計回りにリングを回転しよう。ただし、リングが奥まってところにあり、指で回すのは困難だ。リング上に小さい穴があるので、ここに精密ドライバーを差し込み、ゆっくり力を入れてリングを回す。回す範囲は0.5~1ミリ程度だ。調整したらネジを締め、再度+マークにピントを合わせて撮影する。一度で調整がジャストになることは稀なので、調整作業を数回繰り返し、開放で正確にピントが合うまで追い込んでいこう。ここでは調整を4回繰り返し、おおむねジャストという状態まで持っていった。けっしてパーフェクトではないが、撮影時の目の疲れ具合などで多少のズレが生じるはず。おおむねジャストぐらいでも十分だろうという読みだ。
さて、調整後の7artisans 50mm F1.1で試写してみた。入手時のこのレンズは前ピンだったのだが、狙った被写体に気持ちよくピントが合うようになった。特に2メートルで調整を行っているため、中近距離での開放撮影が本当に快適だ。実のところ、Summilux-M 50mmF1.4あたりでも距離計連動は諦めモードなのだが、開放F1.1で狙い通りなのだから恐れ入る。7artisans 50mm F1.1の魅力は距離計連動アジャスト機能で花開く。そう言い切っても過言ではない。