CP+2024 REPORT
独断と偏見のCP+2024

写真・文=澤村 徹


今朝は急いていた。別にトイレの話ではない。直前になってプレスルームは9時50分からしか使えないと知り、急いていた。プレスルームでゆっくり準備をしてから取材するつもりだった。それなのに、10時開場でプレスルームは9時50分から……。無理じゃん。コインロッカーに上着とバックパックを放り込み、カメラとポーチを提げる。プレス待機列に並んだところで、予備バッテリーをバックパックに入れたままだったことに気づく。そんなわけで、CP+2024、開場です!

ホールDの入場口から真反対にあるメディアパートナーブースへ急ぐ。2月26日発売の「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」が玄光社ブースで先行販売されるのだ。ちなみにこの時点で、僕はまだ仕上がりを見ていない。お客さんに売る前に、ひとまず中身を見ておきたいと会場を足早に横断する。いまどき書店でカメラ本の平積みはとんとお目にかかれないが、今日ばかりはオール平積みだ。新刊アジアンMFレンズもふた山積んである。中国製レンズの熱いところをまるっと封じ込めたヤバイ本です。ぜひご覧あれ。

国内では初となる中国製レンズの本。厳密には台湾、香港のレンズブランドもあり。オール作例付きで71本収録している。


澤村の今年イチ押しブースは2ndfocus by E&Iクリエーションだ。Thypoch、Mr.Ding、Polar、AstrHoriといった新興の中国製レンズブランドが集まっている。「アジアンMFレンズ・ベストセレクション」にも載せているのだが、とにかくこれから来るブランドが集結している。Mマウントレンズが多いので、ライカな人もチェックしておくべし。

E&Iクリエーションが2ndfocusという名でオンラインショップを展開。この写真を撮っているSimera 35mm F1.4 ASPH.というレンズは2ndfocusで購入した。

少し前に情報が出てきたばかりのMr.Ding 35/1.8のサンプルがすでに置いてあった。自分のライカM11で試したところ、近接開放でけっこうイイ感じにボケる。7枚玉とのこと。

マクロスイター風被写界深度目盛りでおなじみのThypoch。ズミルックスコピーと巷で噂される35mm F1.4に加え、28mm F1.4も並んでいた。

ライカの7枚玉リスペクトのPolar。3色のカラバリあり。たしか7枚玉のシルバーってレア物じゃなかったっけ? いろいろロマンがある。

ThypochのEureka 50mm F2はサンプルが間に合わなかったとのこと。テーラーホブソンアナスティグマットのコピーらしい。沈胴風の鏡胴だ。

コシナブースでもっとも気になったのはAPO-LANTHAR 50mm F3.5だ。私物でアポランター35ミリを持っているのだが、開放しか使ってない。開放から文句なしで写りがいいから。ということであれば、「開放F3.5でもよくね?」みたいなノリのレンズだ。試写させてもらったら案の定開放からいい写り。リリースを見たときは沈胴風(実際には沈胴不可)が気になっていたが、実物を見たらリジッドのブラックペイントがやけにかっこいい。細くて小さくてブラックペイントでAPO仕様。もう反則じゃん。

APO-LANTHAR 50mm F3.5は4種のデザインを展開。左のCOLOR-SKPAR 50mm F2.2も参考出展品。なんだろう、今年は暗めのレンズの再構築なのか?

APO-LANTHAR 50mm F3.5のリジッドを俯瞰で撮影。小さいでしょ? なんだかレネレンズの距離計連動改造品っぽい佇まいだ。


サイトロンジャパンではLAOWAの新製品と参考出展品にお客さんが群がっていた。新製品のLAOWA 10mm F2.8だが、既存のシリーズと鏡胴デザインが異なっている。うっすらと青みを帯びたカラーで、斜めに走るローレットもめずらしい。係の人にデザインについて尋ねると、そんなこと訊くお前がめずらしいという顔付きをしながらも、ていねいに教えてくれた。実はLAOWA、今年が10周年なのだという。10周年だから10ミリ。同社初のAFレンズ。そしてスペシャルな演出としての新鏡胴ということだった。AFレンズは今後このデザインなのかなあという気もするけど、そのあたりはどうなんだろう。

新製品のLAOWA 10mm F2.8は他に類を見ないデザインだった。控えめだけど、確実に他と一線を画する。

参考出展の15mm F5はとにかくコンパクト。ミラーレスの他、ライカMマウントにも対応する。絞りリングがないので固定絞りか。


KPIではMeyerのレンズを展示していた。最初にBiotar 58mmを試したのだけど、ライカMマウントなのに距離計連動未対応だった。いまどきは中国製レンズでもちゃんと距離計連動で仕上げており、この仕様はいただけない。一方、Biotar 75mm F1.5 Ⅱがシラッと置いてあり、度肝を抜かれた。あのぐるぐるボケの権化ビオター75ミリだよ? しかもいつのまにかバージョンⅡになってるし。

これがBiotar 75mm F1.5 Ⅱだ。本家もデカイがこちらもなかなかの貫禄。ちなみに、なぜMeyerからCarl Zeiss Jenaのレンズが出ているのか、よくわからない。


エニーズ・インターナショナルという初見のブースを覗いたところ、Mr.Stoneのカメラレザーケースが並んでいた。以前、α7Cのドレスアップ記事を書く際、Mr.Stoneのケースを私物購入して誌面に載せたことがある。懐かしい。

ソニー、富士フイルム、ニコンなど、Mr.Stoneは種類が豊富。底面に金属フレームを採用したタイプのケースだ。


SUPER 8 LABは8mmフィルムのワンストップソリューション(という言い方で合ってるかな!?)だ。8mmフィルムの現像所を立ち上げるとともに、8mmフィルム販売、8mmムービーカメラのレンタルなど、ひと通りのサービスが揃っている。ファッション、音楽、ウェディングなどで引き合いがあるという。

8mmムービーカメラの勇姿にふらふらと引き込まれてしまった。ここで「Dマウントがあ」と言いかけたがグッと言葉を呑んだ。


エツミのブースではC.D.C.という商品がおもしろかった。アウトドア向けのギアに、カメラ用品の機構を組み込もうという趣向だ。CAMERA×CAMPである。三脚やクランプの機構をアウトドア向けアレンジしてある。アウトドアと言わず、書斎などで使ってもおもしろそう。

三脚の脚やクランプをアウトドアの照明スタンドとして利用する。マグベースや照明用フックなど、様々なタイプの製品が揃っている。


フレスコジグリーのブースを発見。あの漆喰ペーパーだ。耐久性の高い漆喰にプリントする。漆喰特有のテクスチャが写真の奥行きを感じさせる。本製品の出始めの頃、個展用にテストしたおぼえがある。局紙と肩を並べるほどの異端児プリント用紙だ。

表面がスムースなS、テクスチャーを感じやすいRの2タイプをラインアップする。サンプルプリントがたくさんあり、手と目でテクスチャーを感じられる。


ラストはカメラホリックのブースへ。カメラホリック誌をはじめ、さまざまなカメラ本が並んでいる。ちなみに、全品10%オフだった。カメラホリックは高い本が多いので、この10%オフはけっこうお得感がある。

バベルの塔、まだ在庫があるらしい。エッセイを小説的手法で描く希代のオールドレンズ本(属性多い)。未読の方はぜひ!

カメラホリックと玄光社は並びのブース。カメラホリックでバベルの塔を買って、玄光社でアジアンMFレンズを買って、ほくほくになって帰宅。というのがいいと思うな。


正午をまわって一般入場をはじまるや否や、通路でまっすぐ歩けないくらいの人の波ができた。冷たい雨が丸一日続いたが、パシフィコ横浜だけは熱い。気づくと大手メーカーのブースを一社も見ずに帰ってきてしまった。X100Ⅵはどうなんだろう。OM-1 Mark Ⅱはやっぱいいんだろうな。謎の敗北感をおぼえながら、それでは皆さん、CP+にいってらっしゃい。