Noxlux or Lunaelumen
中国製レンズのやりすぎOEM
手元に2本の中国製大口径レンズがある。1本は自腹購入したArtra LabのLunaelumen-M 50mm F1.1 ASPH.。もう1本は借り物で、Mr.DingのNoxlux DG 50mm F1.1だ。それとなく外観が似ているのでOEMかなあと思っていたが、関係者から「同じものですよ」と言われて確信に至る。
実際、両社のオフィシャルサイトでレンズ構成図とMTF曲線を確認するとほぼ一緒だった。ただし、ディテールが驚くほど違う。先に「それとなく外観が似ている」と書いたが、細部に目をやると違いばかりが目立ってくる。どれぐらい違うのかというと……、
赤ズマロンと復刻赤ズマロンぐらい違う。
例えがわかりづらかっただろうか。かなり自信を持った例えだったのだが。遠目ではほぼ一緒。でも、目を近づけるとどこひとつとして同じところがない。レンズユニット以外、ほぼ共通点がないのだ。以下、相違点をまとめてみた。
塗装が違う
Noxluxは微光沢のブラック、マットに近い。Lunaelumenは光沢が強い。ブラックペイントではないが、テカテカしている。
絞りリングの向きが違う
Noxluxは絞りリングが時計回り。Lunaelumenは反時計回り。絞りのクリックは1段刻みで同じ。
カム形状が違う
Noxluxは平行カム。Lunaelumenは傾斜カム。
フィルター径が違う
NoxluxはE58、LunaelumenはE52。当然、鏡胴のサイズも異なる。
コーティングが違う
Noxluxは淡い黄緑、Lunaelumenはやや濃いめのマゼンタ。実写するとフレアの色が違う。
フォントは同じ
鏡胴のフォントと文字色は同じ。刻印のレイアウトも同じ。
レンズユニットが同じなのでOEMだと思うのだが、それにしても細部に手を入れすぎではなかろうか。特にカムの形状が異なっているのはどう理解すればいいのか。傾斜カムで近接の連動精度を高めたとか、そんな狙いなのだろうか。ただ、実際の撮影ではそれほど明瞭は違いは感じられなかった。
実写してみると、基本的に両者の写りは同テイストだ。開放は滲まないもののマイルドで、絞ってもさほどシャープにならない。ナチュラルシャープネス系の写りだ。後ボケはおだやかで、クセ玉的な要素は少ない。ただし、逆光には弱くてフレア・ゴーストが盛大に出る。コーティングの色が異なるためか、Noxluxは緑、Lunaelumenはマゼンタのゴーストが出た。トータルで見ると、ちょっとオールドレンズっぽい雰囲気をまとった大口径レンズだ。
とまあ、写りを見ると、やはり同じレンズという印象が強くなる。でも、ディテールの違い、ゴーストの色味、これらを無視して同じレンズと言い切るのはどうなんだろう。ファッションのコラボやダブルネームは、ロゴを入れたり、カラーを変える程度。NoxluxとLunaelumen、両者のOEMはずいぶんと細かいところまで手が入っている。思えば富岡光学のOEMも鏡胴はまるで別モノだったりするし、光学製品のOEMとはこういうものなのか。それにしても、カム形状まで変えるのはさすがにやり過ぎだと思うのだが、どうなんだろう。