ZNONZ Is
ターレットで回折光学写真を究める
これまで数多のピンホールレンズが登場してきたが、ズノン社のZNONZ Isはその決定版といえるかもしれない。プレート交換することなく、4タイプの回折光学写真が楽しめる。しかも作りが極めて高精度なのだ。
このZNONZ Isはターレット型のピンホールレンズだ。側面にダイヤルがあり、これを回すことで、ピンホール、フォトンシーブ、ゾーンプレート、スクエアゾーンプレートという4種類のプレートが切り替わる。このターレット機構を実現するにあたり、それぞれのプレートが正確に光軸と合致するように、高精度な製造が行われているのだ。また、各プレートの光学素子も理想的な描写を得るためにこだわり抜いた設計だ。回折光学写真はいわゆる“ゆるふわ”系の雰囲気があるが、ZNONZ Isはそんな印象とは対極的に緻密で高精度な製造技術によって生まれた製品なのだ。むろん、日本製である。
マウントはライカM互換マウントで、焦点距離は28ミリ相当だ。M型ライカに装着した際は28ミリのブライトフレームが表示される。マウントアダプターを介して様々なミラーレス機に装着可能だ。基本的にはフルサイズ向けの製品だが、実は富士フイルムGFXシリーズに装着してもケラレずに使える。GFXシリーズ(4433イメージセンサー)では35ミリ判換算22ミリ相当で撮影可能だ。
さて、肝心の描写はどうか。どのプレートも総じて柔らかい写りだが、2~3回撮影するとそれぞれのプレートの個性が見えてくる。ピンホールは4種のなかでもっとも滲みが抑えめで、磨りガラス越しに世界をのぞいているような写りだ。それに対し、フォトンシーブとゾーンプレートは盛大に滲む。フォトンシーブは光と影が柔かな塊と化し、ゾーンプレートは滲みの奥から解像感が伝わってくる。スクエアゾーンプレートは格子状の光芒が魅力だ。すべてにいえることは、昨晩の夢をそっと暗箱に閉じ込めたような、自分しか知らない世界が写る。この写りがたまらなくいい。
開発者に取材したところ、本製品の構想はマイクロフォーサーズの黎明期からあったという。ただし、マイクロフォーサーズはイメージセンサーが小さく、センサーに付着したゴミの写り込みが目立ってしまう。フルサイズミラーレスの登場を待ち、本格的にプロジェクトを立ち上げたという。回折光学写真にかける思いの深さをうかがい知ることができるエピソードだ。