無一居 院落 P1 50mm f1.9
視野崩壊する悪魔のレンズ
無一居から復刻レンズの第2弾、院落 P1 50mm f1.9が発売になった。無一居は復刻レンズを手がけるマニアックなメーカーで、2014年に第1弾となる花影 S1 60mm F2.2をリリース。これはタンバールをオマージュしたレンズだった。そして今回の院落 P1 50mm f1.9はキノプラズマートの復刻レンズである。
キノプラズマート(Kino-Plasmat)は戦前大口径レンズの代表格だ。ゾナーやダブルガウスは収差と折り合いをつけながら大口径化を進めたが、キノプラズマートは「収差ナニそれ?」といわんばかりの豪快さを感じる。壮絶なクセ玉として君臨し、オールドレンズマニアに崇拝されている銘玉だ。
Kinoという名の通り、主にムービー撮影用レンズとして活躍した。筆者もキノプラズマート型を採用したCマウントレンズ、Speed Anasutigmat 25mmF1.5を持っているが、強烈なぐるぐるボケが発生し、このレンズでしか撮れない絵が撮れる。院落 P1 50mm f1.9はこうした強烈な描写をフルサイズで楽しめるわけだ。
本レンズはL39マウントを採用し、前述の通りフルサイズに対応する。レンズ構成は4群6枚で、オリジナルのキノプラズマートを模した構成だという。距離計連動に対応しているので、今回はLMリングを介してライカM10で実写してみた。キノプラズマートのオマージュというふれ込み通り、呆れるほどのクセ玉だ。ぐるぐるボケはもちろん、周辺が外側に流れることも。視界が崩壊するかのような強烈な写りだ。マイクロフォーサーズとCマウントレンズの組み合わせではたびたびお目にかかる描写だが、この絵をM型ライカで楽しめる日がやってくるとは思わなかった。
距離計連動精度に過度の期待はできないが、そもそもクセの強いレンズなので、甘いフォーカスでクセをより強調して楽しむのもアリだろう。ちなみにノンコートだからフレア・ゴーストも得意技だ。順光でもコントラストはやや低め。モノクロにすると暴れる描写がよくわかり、このレンズの個性を味わいやすいと感じた。