Geekster 35S 35mm F1.1
タイから届いたAPS-C用大口径レンズ

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 写真・文=澤村 徹

 

Geeksterというレンズブランドをご存知だろうか。いや、知らなくて当然のブランドだ。日本に販売代理店はないし、Amazonを漁ってもググってもヒットしない。Facebookの広告でたまたま見かけただけのひどくマイナーなレンズブランドだ。

ただ、その広告のレンズにひとめぼれしてしまった。ゼブラ柄なのだ。現行レンズなのに、Industar 61 L/D 52mmF2.8のようなゼブラ柄。わかってやってる感じがプンプンする。昨今、MFレンズはいろいろなメーカーから登場しているが、現行でゼブラ柄というアプローチは稀だろう。

 

Geekster 35S 35mm F1.1はAPS-C用だ。タイのカメラショップ、Geeksterが手がけた中国製レンズである。レンズ構成は6群7枚だ。

 

ゼブラ柄の鏡胴が目を奪う。カールツァイスイエナやロシアレンズが好きな人にはたまらないはず。先端はバヨネットになっていて、付属の角型フードが装着できる。

 

早速ポチリたいところだが、Geeksterのオンラインショッピングサイトが見当たらない。Facebookページはラノベの異世界語みたいな文字が並んでいる。これがタイ語であると後日気付くのだが、そのときは正直文字バケかと思った。購入を断念しかけたところ、オールドレンズ仲間がGeeksterと連絡を取り、日本に発送する手立てを整えてくれた。そんなこんなでタイから届いたのが、このGeekster 35S 35mm F1.1である。

Geekster 35S 35mm F1.1はAPS-C用のレンズで、FUJIFILM X、SONY E、EOS M、マイクロフォーサーズマウントを用意している。筆者はFUJIFILM Xマウントのものを購入した。送料を含め、日本円で2万円程度の買い物だ。Geeksterはタイのカメラショップで、本レンズは同社のオリジナル商品という位置付けらしい。商品の箱に「Made in China」と書いてあったので、どこかしらのOEMだろう。ただ、35mm F1.1というスペックはめぼしい中国光学メーカーに見当たらない。設計自体はオリジナルなのかもしれない。

 

FUJIFILM Xマウント用を購入。MFレンズで電子接点はない。絞り優先AEの実絞りで使用する。

 

バヨネット式の角型フードは樹脂製だ。レンズキャップは金属製のねじ込み式。指を入れる窪みをこしらえた凝った作りだ。

 

実写してみると、開放は案の定やわらかい。ただし、滲みはなく、思いの外開放から使える印象だった。解像感は中庸な感じで、繊細という印象は薄い。F5.6ぐらいまで絞り込むとそれなりにシャープになる。ボケはわずかにぐるぐるボケの気があり、逆光ではフレアやゴーストが出やすい。オールドレンズ好きでれば、ほどよく収差を残した設計と歓迎することだろう。

 

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 絞り優先AE F1.1 1/60秒 -0.67EV ISO400 AWB RAW 開放でコインロッカーの看板にピントを合わせる。APS-C機でこれだけ大きなボケを稼ぐことができた。

 

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 絞り優先AE F1.1 1/2900秒 ISO200 AWB RAW 手前の色付いた葉にピントを合わせた。背景がゆるやかにぐるぐるボケを描いている。

 

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 絞り優先AE F8 1/220秒 ISO200 AWB RAW F8まで絞って撮影。隅々までシャープだ。ここまで絞るとガチガチなシャープネスになる。

 

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 絞り優先AE F1.1 1/75秒 ISO200 AWB RAW 開放で近接撮影した。開放のソフトな感じが伝わるカットだ。わずかに歪曲を感じるが、この程度なら許容範囲だろう。

 

APS-Cで35mm F1.1というスペックは、35mm判換算で52.5mm相当。F1.1は大口径なのだが、APS-C用レンズなのでボケ量についてはボチボチといったところだ。反面、名ばかりのF1.1ではなく、ちゃんと明るいF1.1だ。晴天日中だと開放は軒並み露出オーバーになる。開放好きならNDフィルターが必須だ。

 

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 絞り優先AE F2 1/4000秒 -0.67EV ISO200 AWB RAW 晴天下では開放近辺だと露出オーバーになった。看板に偽りなしのF1.1である。

 

X-Pro1 + Geekster 35S 35mm F1.1 絞り優先AE F1.1 1/220秒 -0.67EV ISO200 AWB RAW 浅草でスナップしたカット。タイから旅立ち、よもや浅草の光景と写すとは思わなかっただろう。

 

それにしても、タイから玄人志向のレンズが登場するとは驚きだ。東南アジアとカメラホビー、この関係は要注目かもしれない。マニアは世界中どこにでもいるのだなと改めて実感した。

 

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