angelo pelle Half Case for Leica M10
ライカをレザーで覆う矜持
angelo pelleのライカM10ケースを1ヶ月ほど使ってみた。その使用感をレポートしたい。angelo pelle(アンジェロ・ペッレ)はイタリアのカメラアクセサリーメーカーで、レザー製のカメラケース、ストラップ、カメラバッグなどを製造している。日本ではマップカメラで取り扱いがあるようだが、全ラインアップが揃っているわけではない。ここで取り上げるライカM10ハーフケース(Brown with Holes)はイタリア本社から取り寄せた。
開封して驚いたのは革選びのセンスの良さだ。カラー名はブラウンとなっているが、いわゆる茶色ではなく、ミルクコーヒーと言おうかミルクティーと言えばいいのか、絶妙な中間色だ。しかも適度なムラ感があり、使い込むうちによく触れる部分の色が濃くなっていく。この手のエイジングしやすいレザーはややもすると重い印象になりがちだが、それをパンチングによって軽く見せるところが心憎い。日本ではもっとも売れるレザーケースが黒、という目を覆いたくなるような現実があるのだが、せっかくカメラをドレスアップするならこういうセンスを感じさせるレザーを選びたいところだ。
デザインは往年のLeicatimeを彷彿とさせるスタイルで、M型ライカ用ケースとしてはオーソドックスなスタイルだ。ただし、本家超えするほどにディテールにこだわりが感じられる。カメラにタイトフィットするサイズ感は当然として、両サイドの曲線の描き方が美しい。本ケースは両サイドをホックボタンで固定するのだが、そのホックボタンへとつづく曲線が理想的なラインなのだ。曲線が歪むことなく、革にシワが寄ることもなく、ケース前面から側面へと自然に流れていく。以前、国内のレザー工房を取材した際、ここの加工は職人の腕が試される部分と言っていた。ライカ用ケースはホックボタンに至る曲線で製造現場のクオリティーが見えてくる。
ケースの背面はモニターカバーが付属する。ライカM10-Dみたいに液晶を隠して撮影してもいいし、撮影のときだけモニターカバーを外してもいい。筆者は携行時はモニターカバーを装着し、撮影するときに外すようにしていた。こうした実用性はさておき、デジタルカメラのケースは背面が大きく開き、カメラを覆っている印象が薄い。これはフィルムカメラ用のケースと大きく異なる点だ。モニターカバーを付属したangelo pelleのケースは、カメラケース本来の佇まいを感じさせてくれる。
ストラップはショルダーパッド付きだ。このショルダーパッドを見て、ドン引きした人がいるかもしれない。エンジ色のスウェード調。かつてLeicatimeのストラップもこのような裏面がスウェードのショルダーパッドを採用していた。ただ、Leicatimeのショルダーパッドは色落ちがひどく、筆者は2枚ほど白シャツの背中を赤く染めてしまった。そんな苦い経験もあり、この手のショルダーパッドはつい過剰反応してしまう。
しかし、angelo pelleのショルダーパッドはひと味ちがった。ダメ元で真夏日の炎天下で使ってみたところ、汗ダクなのに少しも色落ちしない。数時間汗ダクで使っても、まったく色落ちしないのだ。おそらくangelo pelleのショルダーパッドは、アルカンターラのようなスウェード調人工皮革を採用しているのだろう。人工皮革と侮るなかれ。いまどきのスウェード調人工皮革は本物以上に手触りがよく、耐水性にすぐれ、しかも本物よりも値が張るのだ。そんな高価なマテリアルを採用するところに、angelo pelleの細部へのこだわりが見て取れる。
昨今、中国製を中心に、底部に金属プレートを採用したカメラケースが増えている。利便性や成形という面で、金属プレートの利点は計り知れない。しかし、昔ながらのカメラを革で覆うスタイルは、カメラと撮影者をやさしく取り持ってくれるような気がする。単に保護材としてなら、ビニールやプラスチックでもいいはずだ。そうではなくあえてレザーを選びつづけるところに、カメラケースの矜持が垣間見える。angelo pelleのライカケースを手にしたとき、そんなことを思った。