Leica M10 Firmware 2.4.5.0
ベース感度ISO200の真相

Leica M10 Firmware 2.4.5.0 写真・テキスト=澤村 徹

 

2018年7月5日、ライカカメラジャパンはライカM10の最新ファームウェアバージョン2.4.5.0の公開をアナウンスした。このファームアップでひとつ気になることがある。それはISOオートのベース感度についてだ。

従来のISOオートはベース感度がISO100だった。それが今回ファームアップでISO200に変更になっている。理由はダイナミックレンジを最大限活用するためだというが、ライカM10とライカMタイプ240で撮り比べをしたことのある人なら、「やはりな」としたり顔になったにちがいない。そう、一部のライカユーザーの間で話題になっている、ライカM10の画質問題への対応と考えられるからだ。

ぼくはライカM10を発売と同時に手に入れた。仕事柄、オールドレンズを使うことが多く、ライカM10でオールドレンズによる逆光撮影を相当数こなした。オールドレンズは逆光条件で描写が豹変するので、そのあたりをライカM10で確かめるのが狙いだ。すると、どんなレンズを付けても違和感がある。試写を繰り返すうちに、その違和感がハイライトにあることがわかった。逆光で撮ると、ハイライトがズボッと抜けるのだ。ライカMタイプ240やα7シリーズではちゃんとハイライトが粘るレンズでも、ライカM10だと呆気なく白飛びする。これは階調が奮わないときによく出くわす症状だ。

ライカM10の発売当時、ライカMタイプ240を下取りに出してライカM10に乗り換えた人がたくさんいた。ライカMタイプ240の中古相場が急降下するほど、そして値崩れしたライカMタイプ240に誰も見向きもしないほど、日本のライカユーザーはライカM10に好意的だった。誰も彼もがM10ウェルカムだった。そうした状況下、末席のライターが「M240の方が画質いいかも」などと言えるはずもなく、言葉を飲み込んだ。正確には、ごく親しい人にだけ、M10に関する所感を正直に話した。M240はJPEGのコントラストが過剰で、画質を良しとする人は少ない。ただし、RAWストレート現像の画像は実に階調豊かだ。そしてM240のベース感度はISO200なのだ。低感度で階調劣化するのは良く知られている事実。なぜM10はベース感度ISO100でリリースされたのだろう。

昨今、M240に出戻りする人が増えているという。M240を下取りに出してM10を買い、そのM10を売って値崩れしたM240を買い戻す。このタイミングでM10のベース感度を変えてきたのは、M240出戻り現象と無縁でないはずだ。

ライカM10が発表されたとき、ライカ社はM10をM240の後継機とはひと言もいっていない。どれだけカメラマスコミが誘い水をしても、後継機という表現を避けた。かといって、富士フイルムのようにツートップ(X-Pro1とX-T1はツートップという関係だった)という言い方もしない。後継機でもない。ツートップでもない。さて、M10とM240はどんな関係なのか。ライカ社は明言を避け、ただ「併売する」というコメントだけを残した。まさか、廉価版ということはなかろう。

所有するライカM10を、バージョン2.4.5.0にファームアップした。明日からベース感度ISO200で撮る。階調性の向上に期待したい。