Kinoshita Optical Kistar 85mm F1.4
クビレという名の美学

Kinoshita Optical Research Institute Kistar 85mm F1.4 写真・テキスト=澤村 徹

 

クビレは美しい。女性の曲線美の話ではない。レンズのことだ。大原則、レンズの鏡胴は円筒形で事足りる。円形のガラス群を包み、ピントや絞りをリングで調整。同一口径の円筒形こそが最適化されたレンズの形状だ。

にもかかわらず、クビレのあるレンズが存在する。Elmarit-M 28mmF2.8の第1世代はその冴えたる例だ。レンズマニアであれば、MS OpticalのライカMマウント改造したG Biogon T* 28mmF2.8を候補に挙げることだろう。そうしたクビレのあるレンズに新たな1本が加わった。木下光学研究所のKistar 85mm F1.4がそれである。

 

ピントリングから絞りリングにかけ、鏡胴がテーパー状になっている。光を当てたときの陰影とグラデーションが美しい。

 

Kistar 85mm F1.4はピントリングの後端が傾斜を描き、ひとまわり小さい絞りリングへと連なる。このレンズはKCYマウントと呼ばれるヤシコン互換マウントを採用しており、マウントアダプターと組み合わせてデジタルカメラで使うことを想定したレンズだ。そのため、レンズ後端の口径をマウント径に揃える必然性はない。つまり、寸胴の鏡胴デザインでも機能的に問題はないはずだ。ではなぜクビレのある鏡胴デザインを採用したのか。このことを木下光学研究所の代表に質問してみた。答えは至ってシンプルだった。

「この方がかっこいいから」

そう、クビレのあるレンズはかっこいい。レンズ好きなら誰もが共有できる感覚だ。千の理由を重ねるよりも、このひと言でKsitar 85mm F1.4への熱い思いが伝わってくる。描写に自信があるからこそ、デザインにこだわりが生まれるのだ。

 

クビレのおかげで、レンズ後端とマウントアダプターがほぼ同口径となる。カメラに装着した際の見え方も含め、クビレのあるレンズはかっこいい。

 

福生界隈に木下光学研究所のR&Dセンターがある。Ksitar 85mm F1.4でお膝元の福生をスナップして歩いた。自然なシャープネスで、絞っても過度に硬くならない。それでいて、周辺部でもしっかりと解像し、画面上のどの位置でもピントが合う。Kistarレンズはオールドレンズテイストをコンセプトとして単焦点MFレンズだが、このKsitar 85mm F1.4はクセが控えめで扱いやすい。なお、本レンズによるポートレートが見たいなら、オフィシャルブログを参照しよう。

 

α7II + Kistar 85mm F1.4 絞り優先AE F2 1/1600秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW

 

α7II + Kistar 85mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/2000秒 ISO100 AWB RAW

 

α7II + Kistar 85mm F1.4 絞り優先AE F4 1/200秒 ISO100 AWB RAW

 

α7II + Kistar 85mm F1.4 絞り優先AE F1.4 1/1250秒 ISO100 AWB RAW

 

Kinoshita Optical Research Institute Kistar 85mm F1.4