WOTANCRAFT PILOT 7L
Sサイズ7Lと侮ってすみません

WOTANCRAFT PILOT 7L Charcoal Black 写真・文=澤村 徹

 

昨年からWOTANCRAFT TROOPER(ヴォータンクラフト トゥルーパー)のミディアムサイズを使ってきた。撮影の頼れる相棒としてヘビロテ中だが、近場を散歩したり病院に行ったり、日常のちょっとした外出では大袈裟に感じることがある。普段使いできるカメラバッグを物色していたところ、同社の新作PILOTシリーズに出会った。しばらく使ってみると、これがなかなかどうして予想の斜め上を行く性能なのだ。そんなWOTANCRAFT PILOTをレポートしよう。

WOTANCRAFT PILOTシリーズは、TROOPERシリーズの弟分という位置付けだ。ショルダータイプのカメラバッグで、TROOPERは随所にレザーパーツをあしらっていたが、PILOTではナイロンベルトに置き換わっている。生地はTROOPERと同じコーデュラナイロンベースのオリジナルファブリックで、きわめて撥水性が高い。ありていに言えば廉価版なのだが、軽量化モデルという側面がポイントだ。クッションはしっかりと入っており、耐衝撃性を備えたままうまく軽量化している。軽いカメラバッグを探しているなら検討の価値アリだ。

 

ショルダータイプのカメラバッグで、チャコールブラックとカーキブラウンの2色展開だ。写真はチャコールブラックの7L。

 

PILOTシリーズは7Lと10Lの2サイズ展開で、今回は小さい7Lを選んだ。先に述べたように、普段使いのバッグとして使いたいからだ。PILOT 7Lの横幅は35cmで、電車移動がメインの場合、このサイズ感がきわめて重要なのだ。横幅が40cmを超えるバッグだと、電車で座ったとき、両隣の人の迷惑になりかねない。PILOT 7Lなら自分の膝から左右にはみ出さない。電車メインの都市生活者にはこのサイズ感は扱いやすいはずだ。

さあ、肝心の収納力について見ていこう。先に述べたように、普段使いの手軽なカメラバッグというつもりだったので、レンズ付きボディ1台、交換レンズ1本、スマホや財布などの小物類が収納できればOKと考えていた。PILOT 7Lを侮っていた。レンズ付きボディがらくらく2台収納できる。単焦点レンズなら追加で隅に押し込めそうだ。デバイダー(間仕切り)は折り目が入っていて、柔軟に形を変えられる。これのおかげで限られたスペースにみっちりと機材が詰め込めた。

 

デバイダーを1枚使い、2台のボディを収納してみた。レンズ付きのα7RIVとライカM10が無理なく収納できた。

 

デバイダーは2枚付属し、メインスペースを3分割できる。ボディ2台の他に、交換レンズ、ブロア、メモリーカードケースなどが収納できそうだ。

 

ついでに仕事道具のノートやポーチ、スマホ、財布、鍵などの小物類、さらにペットボトルを収納していく。仕事で持ち歩くアイテムがすべて収納できてしまった。特に秀逸なのがフロントポケットだ。メインフラップを空けた前面が大きなポケットになっている。今回、レザー製のポーチ(筆記用具、名刺入れ、USBメモリーなどが入っている)がすっぽりと収納できた。さらにスマホや財布を入れる余裕もある。このフロントポケットはメインスペース(カメラ・レンズの収納スペース)を圧迫せず、外側にふくらむ。ここにあれこれ詰め込んでも、カメラの出し入れには影響しないのだ。小振りな軽量カメラバッグなのに、その収納力は実にお見事。いっそ、お散歩カメラバッグから仕事用カメラバッグに格上げしてしまおうか。

 

タブレット用のデバイダーが付属。本来はタブレットの収納スペースだが、ここでは仕事用のノートを差してみた。

 

小物類を入れてあるポーチをフロントポケットに収納。フロントポケットは外側にふくらむので、カメラバッグのメインスペースへの影響はない。

 

側面ポケットに500mlのペットボトルを入れてみた。ややきつめだが、出し入れは支障ない。オプションのドローストリングポーチなら余裕をもってペットボトルを収納できる。

 

PILOT 7Lにこれだけのアイテムが収納できた。写真ではカメラバッグにオプションのポーチが付いているが、ポーチなしで写真上のアイテムが収納できる。

 

ちなみに、さらに容量を増やしたいときは、PILOTシリーズ専用のポーチがオプションで用意されている。これはバッグの前面に装着可能だ。頑丈な金具でバッグに固定するため、脱落の心配はないだろう。ただ、このオプションポーチは7L/10L共用のため、7Lに付けるとちょっとオーバーサイズな印象を受けた。とは言え、容量アップの手段が用意されているのは心強い。

 

オプションのジッパーポーチ(右)とドローストリングポーチ(左)を装着。これで大幅に容量アップできる。メインフラップを上からかぶせてみたが、ちょっと苦しそうだ。

 

メインフラップの外にポーチを出してみた。こちらのほうが無理がないが、見た目はどうにも落ち着かない。

 

ポーチに2つの金具が付属し、これでカメラバッグ前面のナイロンベルトに固定する。しっかり固定できるので安心だ。

 

オプションのポーチはショルダーベルトが付属する。単体でショルダーポーチとしても利用できる。

 

撮影中に気づいた点をふたつほど。まず、ショルダーパッドがいい仕事をしてくれる。背面がラバーになっていて、肩にしっかりと吸い付いてくれるのだ。そのため、カメラバッグ本体を前後に移動しても、ショルダーパッドがズレない。スルスルとストレスなくバッグを移動できる。個人的にショルダーパッドのズレがすごく気になる質なので、この仕様はかなり好印象だ。欲を言えば、ショルダーベルト自体がもう少し幅広だと、肩への負担が軽減できたような気がする。また、幅広ショルダーストラップだと、タクティカルっぽい雰囲気が増してデザイン的におもしろそうな気もした。

 

さほど厚みのあるショルダーパッドではないが、肩にピタリと付いてショルダーベルトの動きがスムーズだ。

 

ふたつめはメインフラップの金具についてだ。この金具が片手だと外しづらい。外れないわけではないのだが、それなりに慣れが必要になる。機材を出し入れするときは片手にカメラを持っていることが多いので、メインフラップは片手で開閉できたほうがストレスが少ない気がする。無論、外しづらいということは、不用意に開くことのない確実な固定方法でもあるが。

 

フック型の金具でメインフラップを固定する。V字のナイロンベルトはハンドル代わりにも便利だ。

 

最後に、WOTANCRAFTのカメラバッグはトラディッショナルとの距離の取り方がうまい。ミリタリーを基調とすることで、ドンケやビリンガムといった大御所の影響を上手に回避している。カメラバッグはその多くが過去のスタイルを踏襲し、似たり寄ったりのデザインだ。定番=安心感ととらえ、新しいスタイルの模索すら諦めているように思える。WOTANCRAFTのデザイナーが脱ドンケ、脱ビリンガムを意識しているかはさておき、新しいスタイルを構築したいという思いがひしひしと伝わってくる。これからも機能性とデザインの両面で我々を楽しませてほしい。

WOTANCRAFT PILOT 7L

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