RareAdapters Foca Mount Adapter
どんなに使いづらくても唯一の選択肢
有名なのに黙殺されているマウントがある。Miranda、Petri、Focaがその代表格で、勝手に三大不遇マウントと呼んでいる。中でもひときわ冷遇されているのがフランスのFocaだ。スクリュー式とバヨネット式、ふたつのマウントがあるのだが、どちらもマウントアダプターがない。Opralex 5cmF1.9をデジタルで使いたいなら、改造品に手を出すしかない。長らくそう諦めていたところ、我らがRareAdaptersからスクリュー式のフォカマウントアダプターが登場した。感涙である。
RareAdaptersはアメリカのカリフォルニア州、クパチーノにあるマウントアダプターメーカーだ。製品の完成度を見ると、メーカーと言っても町工場のような規模ではないだろうか。ややもすると個人がこつこつと旋盤を回してる可能性すらある。製品品質に関しては過度の期待は禁物だ。基本的に分かってる人向けのマウントアダプターである。
ただし、そのラインアップがすばらしい。ブランド名が表す通り、希少なマウントに対応した製品を矢継ぎ早に製品化しているのだ。Pentinaマウントアダプターを見つけたときは狂喜乱舞したが、さらにPraktinaマウントアダプターを発見して悶死しそうだった。Focaマウントアダプターを出すならRareAdaptersしかないと思っていたところ、ついに登場した。
このFocaマウントアダプターはスクリュー式レンズ専用だ。ここではスクリュー式FocaマウントのOplarex 5cmF1.9を取り付けている。Oplarex 5cmF1.9はレンズ側にピントリングがない。そのためマウントアダプター側でピント操作に対応する必要がある。このあたりがマウントアダプター設計者の腕の見せ所というわけだ。
RareAdaptersのFocaマウントアダプターは、スクリュー式のピント操作機構を搭載してきた。レンズを装着して回転すると、マウント面が繰り出すのだ。ヘリコイドを使わずにピント調整に対応したのは創意工夫の賜物だろう。おかげで39ドルと買いやすい価格帯を実現している。ただ、この回転式ピント機構のおかげで相当面倒なことになる。
レンズの着脱がスクリュー式、ピント操作もスクリュー式。さらに沈胴操作が回転式で、絞りリングも回転式。とにかくどこかを回すたびに別のところも回ってしまうのだ。一応、レンズを着脱するときは側面のピンでピント操作のスクリューを固定できる。ただ、操作しづらいことには変わりない。
実はピント合わせについても問題がある。ピント用のスクリューはけっこうガタつきがあり、レンズを指で押えた場合と指を離した場合でピントの合い具合にちがいがある。おそらくガタつきのせいでレンズの光軸が傾いてしまうのだろう。これまで無数のマウントアダプターを使ってきたが、これほど難儀する製品ははじめてだ。
無限遠が出てピント合わせもできるのだから、とりあえず性能面では問題ない。しかし、この操作性は使い手を相当選ぶだろう。完全にわかっている人向けもマウントアダプターだ。そもそもFocaのマウントアダプターなんてやり込んでる人しか使わないと思うが。いっそ割り切って、Foca用のLMリングとか36-39mmリングを作ってくれないだろうか。とりあえずライカMマウント化すれば、ライカMヘリコイドアダプターでピント合わせできる。どうせわかってる人向けの製品なのだから、それくらい割り切ってもいいような気がした。