Kenji Leather Leica M10 Half case
裏蓋という名の儀式的ロマン

Kenji Leather Leica M10 Half case

ループタイは果たしてネクタイだろうか。あれはただの紐だ。形骸化したネクタイのなれの果てであり、よく言えば、形而上学的なネクタイである。ループタイを着けても、ネクタイを着用したとは言えない。しかし、ループタイを着けた当人は、ネクタイを着けた気になっている。何の話がしたいのかって? そろそろ向き合ってみようじゃないか。形骸化しつつあるライカのアレ。そう、裏蓋と。

 

カモフラ柄をプリントした厚手のレザーを使用。ビルドイングリップでしっくりと手になじむ。ボディへのフィット感も上々だ。

ケンジレザーのライカM10ハーフケースは、かつてないほどに実用的で、同時に世界中のライカファンを敵に回すほどのギミックが仕込まれている。裏蓋を外してこのケースを装着すると、ケースの底部を開けてバッテリーとメモリーカードにダイレクトアクセスできるのだ。ライカユーザーがうっすらと心に抱きつつも、けっして口に出さなかったこと。裏蓋って邪魔だよね。このサイレントマジョリティーのニーズに真正面から応えたケースだ。

 

裏蓋を外したライカM10にケースを装着。底を開けるとバッテリーとメモリーカードが取り出せる。

使い方は簡単だ。ライカM10から裏蓋を外し、ケースを装着して付属のネジで三脚穴に固定する。裏蓋を外す以外、通常のケースと何ら変わりない。底部に3Dプリンターで成形した樹脂プレートが組み込まれ、ボディと接触する面はバックスキンが貼ってある。ボディを傷つけることなく、かつ堅牢な構造で安心感がある。底面の開閉部はマグネットが埋め込まれ、撮影中に開閉部が開いてしまう心配もない。

 

3Dプリンターでボトムパネルを成形している。いよいよカメラアクセサリーにも3Dプリンターの波が押し寄せてきた。
ケースの底面はマグネットで固定している。十分な強度があり、実際に試用して撮影中に外れることはなかった。

ほぼ時を同じくして、アルテ・ディ・マーノ(Arte di Mano)からも裏蓋なしケースが登場していた。ケンジレザーとアルテ・ディ・マーノ、ともに若い世代が立ち上げたレザーブランドだ。ケンジレザーはシンガポール、アルテ・ディ・マーノは韓国。地球規模の同時多発的なシンクロがおもしろい。ライカの裏蓋にロマンを見出すよりも、実用性を突きつける世代の登場だ。

彼らのことをKYだなどと揶揄する人は、きっとライカM10であまり写真を撮っていないのだろう。ライカM10はバッテリーが小型化し、とにかく電池の保ちがわるい。撮影中に屋外で、ケースを外し、裏蓋を外し、それらを手にしながらバッテリー交換する面倒臭さと言ったらモウ。ケンジレザーのライカM10ハーフケースは、ケースが機能提供する冴えたる例だ。

 

両サイドは外側にふくらむようにカーブを描く。この部分はボディに密着させるデザインが多く、こうしたディテールにもオリジナリティーが見て取れる。

Kenji Leather Leica M10 Half case